ナポレオンの名言に「一頭の羊に率いられた百頭の狼群は、
一頭の狼に率いられた百頭の羊群に敗れる」という言葉があります。
組織を構成する一人ひとりの能力が高ければ高いほど
強い集団になるのかというと、決してそうではなく、
組織は、個々人の総和ではなく、
リーダーにより全く異なった「集団」になるということです。
また、「稲盛和夫氏著 人生の王道」に次のような記述があります。
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私は、組織をつくるのは、城を築くようなものだと考えています。
素晴らしい城をつくろうとすれば、
まず、しっかりした石垣を組まなければなりません。
しかし、巨石つまり優秀な人材だけでは石垣は組めません。
巨石と巨石のあいだを埋める小さな石が必要になるのです。
要所要所に巨石の間隙を埋めるような小さな石がなければ、
石垣は脆く、衝撃があればすぐに崩れてしまいます。
つまり、巨石として優秀で功を立ててくれるような
人材を外部も含め登用する一方、
古くから会社のために献身的に努力してくれた人材には、
巨石と巨石のあいだを埋める貴重な石として働いてもらうべきなのです。
小さいけれどイブシ銀の働きをする小さな石を
捨て去ってはいけません。
縁の下の力持ちのような古い人たちが残ってくれて
初めて会社は強くなるのです。
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管理職者の方から、「ベテランの部下と新人の部下」、
「優秀な部下とそうでない部下」を
どう扱うとよいのかと聞かれることがあります。
管理職者の方は、部下が成長していくスピードや
職務遂行能力の違いのことを指して、
優秀な部下ばかりだと助かるのにと言います。
ナポレオンの名言にあるように、
ナポレオンの軍隊に優秀な兵隊ばかりが集まった訳ではありません。
また、稲盛氏の企業にいつも優秀な人たちばかり
集まった訳でもないかと思います。
実際、研修でお世話になっております企業様でも、
優秀な部下がそろっている部署が良い業績を
獲得しているかといえば、決してそういう風にはなっておりません。
“ベテランの部下と新人の部下”、
“優秀な部下とそうでない部下”
などいろいろな部下の方が集まった部署の中でも優秀な業績を
獲得している部署も現実にあります。
ナポレオンの言葉にあるように企業は、リーダーによって、
全く異なった能力を持つ集団になる
というのが、事実と思います。
このような事実から、部署の業績というのは、
部下の方というよりも、リーダーである管理職者に
負うところが大であるという認識を持つことが、
まず、重要と思われます。
■部下に影響を与えるためには、部下の影響を受けること。
一人ひとりの部下を理解する、エネルギーを受け入れる。
そして部下の成長を確信する、信じる、期待する、称賛する
7つの習慣のステーブン・R・コヴィ氏は、
「影響を与えようと思ったら、まず影響を受けること」
と言っています。
部下育成のためには、部下のことをまず知ること、
理解することが必要となります。
部下のことを知り、理解するためには、
部下の話を聴くことが重要となります。
聴くという字は、14の心で耳を傾けると書きます。
また、聴くという字は、耳と目と心で、できているとも言います。
心を傾け、部下の心を聴く、
部下の真意を聴きとることが必要となります。
別な側面で捉えると、部下の心を聴く、
部下の真意を聴きとるということは、
部下のエネルギーを受け入れるということになります。
自分とは、違ったエネルギーを受け入れるのは、
精神的にも肉体的にも大変な面がありますが、
上司となった以上はそういう覚悟が必要です。
上記のような点を踏まえて、
部下育成のための実務的な計画を立てるためには、
部下一人ひとりの現状の職務遂行能力や
強み、弱み、得意、不得意分野、課題点、今後の希望などを
把握することが必要となります。
部下一人ひとりのことをよく知った上で、それを踏まえて、
仕事でどのような成果を獲得しなければならないか、
どのような知識や技術を学ばなければならないかなど、
今後6ヶ月間の部下の育成計画を立て、
部下と一緒になって実践します。
部下のことをよく分からない状況で、
育成計画を立てても部下には
ただの押し付けとなってしまう可能性があります。
6ヶ月間の部下の育成計画を立てる際には、
この育成計画を実践することによって、
6ヶ月後の部下の言動が自分がイメージしたように
変わるのかを確信できるまで
考え抜き育成計画を立案することが必要です。
6ヶ月後の部下の言動変わらなければ、
立案した育成計画は意味がないということになります。
ナポレオンは、時間があれば、
兵隊一人ひとりと故郷のことや家族のこと、
戦いのことなどよく話し、
部下の兵隊と一緒に過ごす時間を
できるだけ多くとったといいます。
ナポレオンのこのような行動も強い部下や強い組織を
つくるための重要な行動となります。
信じるということは、期待をするということでもあります。
部下の方は、上司の期待に応えようと頑張ります。
そして、部下が成果を上げた時は、
大きな称賛を与えることです。
部下の方は、上司の心からの称賛に満足し、
仕事に対する愛着心や誇り、モチベーションを高めます。
■管理職のリーダーシップにより、最大の相乗効果を生み出す
リーダーシップとは、部下一人ひとりとのコミュニケーションや
職場全体のコミュニケーションを密にし、
協力体制を築き上げ、部下一人ひとりのやる気を引き起こし、
部署の目標を達成するために必要な行動を導き出す能力とも言えます。
権限に基ずく命令を強制的に部下に実施させることよりも、
別次元の高い能力が要求されます。
人の集団というのは、1+1+1がプラス3とはならず、
プラス10にもマイナス10にもなります。
強い組織、優秀な人材をつくるためにどうしたらよいのか、
永遠の課題のように、日々数多くの研究成果や
本が出版されているのが現実の姿でもあります。
学習と実践の積み重ねが、無限の可能性を引き出します。
日々研鑽に励み管理職者としてリーダーシップ力を磨くことが、
自分の担当部署において最大の成果を獲得するために重要となります。